養老天命反転地-荒川修作とマドリン・ギンズの 建築的実験

母の入院などで地元に戻った合間に実家近くの養老天命反転地に久しぶりに行ってみました。

養老天命反転地とは?

1995年に荒川修作+マドリン・ギンズの構想を岐阜県養老町に公園という形で開園された、現代アートの作品です。斜めにたった壁、決して水平ではない床、壁からはみ出た家具、天井を見上げると床が反転したかのような配置、この空間の中を回遊することで普段我々が感じている感覚を再認識する作品です。

私は岐阜出身なので子供の頃にはこの施設が出来ていて、家族で行った事もあります。当時からどうして岐阜のこの地にこの作品が出来たのかとても不思議でした。この施設一帯は子供向けの遊園地や養老の滝などの地元に親しまれた観光スポットで家族づれが多く、この辺りにアートの施設はありませんでした。養老天命反転地を訪れている人もレジャーを楽しむ家族連れが多いのです。(荒川さんは名古屋ご出身なのでご縁があったのでしょうか)

wikipediaの養老天命反転地の項目に

感覚の不安定さ・危うさを体全体で楽しむことを目的とした施設である。こうした日常生活では触れる機会の少ない錯覚感、不安定な感覚を体全体で味わうことにより、人間本来の感覚を再確認することを主要なテーマの一つとしている。また、例えば子供連れの場合、危険そうで子供から目が離せない等、お互いの存在を常に意識しながら過ごすため、人と人とのつながりのあり方やバリアフリーについての問いかけも行われている。

と書かれていますが、まさにその通り。小さい子供は大喜びで公園を走り回り、時には転んで坂を転げ落ちていくこともあり、親も周囲もドキドキして子供を見まもりました。

養老天命反転地記念館

記念館(事務室)内部。中も迷路になっていて天井を見上げると床のような錯覚を覚えます。

外に出るドアも斜め。

極限で似るものの家

内部は迷路状になっていて壁も斜め、床も水平ではありません。天井と床が同じく家具が配置されています。

楕円形のフィールド

フィールドの手前から奥を見た所。かなりの斜面の中に作品が配置されています。

フィールドの奥から手前を見た所。

楕円形のフィールドの中に「白昼の混乱地帯」「切り閉じの間」「宿命の家」などがあります。

宿命の家

迷路の床を見ると所々ガラスばりとなっていて、下にはテーブルやイスなどの「家」が、まるで廃墟のように存在します。

精緻の棟

死なないための道

楕円形のフィールドの周りをぐるっと囲む壁の間に細い通路があります。ここは大人がすれ違うのがやっとの幅で、進むと行き止まりとなっていて、養老天命反転地を一望できる展望スペースとなっています。ここから戻るためには通ってきた道を引き返すしかないのですが、体格のいい男性とすれ違う時は山道で車がすれ違う時みたいにお互いに壁に身を寄せてすれ違います。

ここでも普段感じている人との距離感や自分の身体の大きさ、個の空間を再認識することとなります。

バランスをとるために普段使わない筋肉も感覚も使うので、けっこうぐったり; 

養老天命反転地への行き方

養老天命反転地への交通は車か電車のいずれか。
電車の場合は最寄りの駅は近鉄養老線の「養老駅」です。名古屋からの場合は
1)JRの東海道線下りにのって大垣駅下車、大垣から近鉄養老線で養老駅下車(約1時間)
2)名古屋から三重県の桑名まで行き。近鉄養老線に乗り換え養老駅下車(約1時間30分)
の2ルートです。

駅を降り改札を出ると左手に見える道から緩やかな坂を登り10分程度歩きます。こどもの国の先を左手側に入ると入りぐちがあります、
養老駅を降りる時に駅員さんに「養老天命反転地に行く」と伝え切符に「無効」スタンプを押してもらいます。これを入場窓口で見せると、750円の入園料が「無料」になります

荒川さんの作品は養老天命反転地 のほかに、岡山の「遍在の場・奈義の龍安寺・建築する身体」、東京都三鷹市の三鷹天命反転住宅などもあります。興味があるけど養老までは行けないという方は、お近くの施設に立ち寄ってみてください。